魔法学校たんぽぽ教室で、魔女よねごんは暮らしています。可愛い1年生との日々をみなさんにおわけします。


by yonegon_gon

音楽といふもの・最終回

さて、2年間音楽を教えたのだが、とても印象に残っているクラスがある。
4月、入学してきたばかりの可愛い1年生たちだった。

入学式が終わり、しばらくしたある日、
子どもたちの昇降口のところを通りかかった。
ちょうど休み時間になったので、1年生たちがわいわいやって来た。
かわいいなあ1年生、とにこにこしながら見ていると、
突然、背後から声が聞こえた。
「くそばば先生」
ふだんなら、はしっと振り返り、そいつの襟首をむんずとつかめる素早さがあるのに、
そのときは、ついうっかり「1年生、かわいい~」なんて油断してたものだから、
はっと気がついて振り返ると、
もう子どもたちはぐちゃぐちゃにまぎれて、誰が言ったのかもわからなかった。

職員室にもどり、隣の席のまき先生に一部始終を話すと、
彼はにこにこしながら、言った。
「やはり、あれですね。教育者としてはそんな場合、
本当のことでも言っていいことと悪いことがあることを、
1年生には教えるべきでしたね。
すぐ、ぐっと首根っこつかまえて。」

うむ、そうだ!今度出会ったら絶対に言ってやる。
本当のことでも、言っていいことと悪いことがあるってことを!
a0042798_20593388.gif








その日は、1年生が学校探検であちこちまわっていた。
こないだここに書いたへんな先生の一人、
ピラニアを教室で飼っていた格闘家の先生のクラスが、音楽室にやってきた。

彼は、子どもたちから「いのき」と呼ばれていた。
アントニオ猪木のことである。
彼が、あごをつきだしてにゅっと笑うと、いのきそっくりになる。

さて、極真空手黒帯の彼が、1年生の担任に決まったとき、
優しい同僚のみなさんは、彼にこんこんと言いきかせていた。
「いい?どんなに頭にきても机をたたき割っちゃだめよ。
次の日から、学校に来なくなる子が続出するからね。」
「大きな声はできるだけ出さないんだよ。
自分ではさほどでもないと思ってても、
おちびさんたちはびっくりするからね。」
「優しく、やさしくね。」

で、そのいのき先生のクラスが学校探検で音楽室にやってきた。
音楽室は絨毯敷きなので、入り口で上靴を脱いで入れる靴箱がある。
いのき先生が言った。
「え、ここは音楽室です。
ここは中に絨毯がしいてあるので、入り口で靴を脱いで・・・・。」

「先生、じゅんばんぬかすよ~!」
「ちがうよ、ちがうよ!押すからだよ!」
「でも、ぬかすんだよ!ずるいいい!」

いのき先生のこめかみがピクッと動いた。
でも、それをぐっと押さえて続ける。

「ええ、ここで上靴を脱いで、この靴箱にきちんとそろえて・・・。」

ガラガラガラ・・・・

彼が「この靴箱に」と言って靴箱に手を置いた瞬間、
靴箱の板がみんなはずれて、みごと下に落ちてしまった。

「いやあ、こわしたあ!」
「いのき、こわしちゃった!」

子どもたちのヤジにもめげず、彼は体制を取り直し、靴箱を元に戻し、
何人か子どもたちを音楽室にほうりこんだ。

私は一部始終を黙って見ながら、ピアノの椅子にすわっていた。

「あ!ピアノひく、くそばば先生だ!」

う・・こいつか!さっき、昇降口で私に言ったやつは!
でも、今は担任の前なので何も言うわけにはいかない。
にっこり笑って、「こんにちわ。」と言ってやった。

いのき先生は、音楽室の後ろにおいてあるドラムセットの説明をした。

「ええ、これはドラムセットと言います。」
「いのき、こわして!」
「こわして!」

ドラムセットを見て、「たたいて」とか「鳴らして」と言った子どもたちはたくさんいるけれど、
「こわして」と言ったのは、この子たちがはじめてだった。

ちなみにこのクラスの初めての授業でピアノひいたとき、
「へったくそ~。」と期待通りのコメントが・・・・。
ふん、可愛い1年生でした。
[PR]
by yonegon_gon | 2006-01-08 20:59 | 魔法学校