魔法学校たんぽぽ教室で、魔女よねごんは暮らしています。可愛い1年生との日々をみなさんにおわけします。


by yonegon_gon

卒業式の練習

2月末から、たいていの小学校では卒業式の練習が始まる。
暖房のない体育館での練習は、まだまだ寒いこの時期、体の芯まで冷える。
先生になって何が苦手って、この体育館の寒さほどこたえるものはない。

運動場なら厚着もできるが、卒業式当日の体育館でダウンコートなんぞもってのほか。
式服一枚で、その下にはごっついババシャツとほかほかカイロがいっぱい。
それでも足下から来る冷気は、いかんともしがたい。
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うちの学校では、卒業式に在校生が歌う歌は決まっている。
「空より高く」と「きみに会えて」の2曲。
どちらもステキな歌だ。

2年生以上は、毎年歌っているので、ほぼ覚えている。
しかし、1年生は初めて。
ということで、歌詞を覚えるために、昔、いい加減な音楽の先生もやっていたよねごんが、
覚えているかどうかのチェックを、たんぽぽで行うことになった。

休み時間、授業の合間、給食の後、
2人3人と1年生がたんぽぽにやってきて、
CDにあわせて歌う。

しぶ~い顔でよねごんが、口元を意地悪く見つめるもんだから、
声がひっくりかえってあたふたしてしまう子もいる。
緊張のあまり、歌い出しでけつまずいて「失格!」になっちゃう子もいる。

意地悪魔女のよねごんは、すました顔で「次回がんばってくださあい。」
ほっほっほ。日頃のストレス解消だぁ。



さて、給食の後、あったかボディのよしきくんが、一人でたんぽぽにやってきた。
「よ、よねごん、歌のテストして。」
「お、よしきくん。一人ですか?」
「うん。」
「はい、いいですよ。では、どうぞ。」
おもむろにCDのスイッチを押す。よしきは、歌いはじめた。
貫禄のある彼のボディから出てくる歌声は、なかなか美しい。
しかし、よしきは歌いながらなぜか両手を揺らせはじめた。
オ・ソレ・ミオを歌うパヴァロッティのように。

彼の表情は、とても真剣だ。
実は、よしきくんはものすごく緊張しやすいタイプだった。
以前、算数の100までの数の勉強で、1から順に一人ずつ言って、
間違った人がいたら最初に戻るというのをやったことがあった。

何度か後戻りしながらも、96,97,98・・までやってきた。
さあ、99!最後は、よしき!みんなの緊張が高まる。
よしきの番だ。よしきが叫んだ。

「30!」

さ・・・さんじゅう?
一瞬、教室はシーンとなった。
言ってしまった本人も、シーンとなっていた。
どうして99の次が「30」になったのか、結局謎は解けなかった。

とまあそんな訳で、緊張しやすいよしきは、手をぶらぶらと揺すって歌う。
そのぶらぶらの手が、やがてゆっくりと回り始める。

もうすぐクライマックスという頃には、
その手はまるで飛行機のプロペラのように、
ぶんぶんとよしきの身体の前で大きく回転していた。

午後からの職員会議の案件を、パソコンで打ちながら聞いていたよねごんは、
できるだけよしきを見ないようにがんっばった。
キーボードを見つめ、歌だけに集中しようとしていた。

でも、ぶんぶん回るよしきの両手が、あまりにもすごくて、
このままよしきは、歌いながら飛びたってしまうのではないかと思えるほどで、
失礼だとは思ったんだけど、とうとう我慢できず笑い出してしまった。

「あっはっはっはは。ご・・ごめん、ごめん。
あっはっはっはっは・・・。」
涙が出そうになって笑うよねごんを、
ちょっと困った笑顔でよしきは見つめていた。

ごめんね、よしき。でも、合格したよ。
よしきは未来のパヴァロッティだ!
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by yonegon_gon | 2006-03-08 23:07 | 魔法学校