魔法学校たんぽぽ教室で、魔女よねごんは暮らしています。可愛い1年生との日々をみなさんにおわけします。


by yonegon_gon

思い出 その2

昔、1年生を担任していたときだった。
子どもたちも学校に慣れ、運動会も終わり、音楽会も終わり、
秋が過ぎようとしていた頃のこと。
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休日にのんびり家でプリントの丸打ちをしている私に、一本の電話が入った。
クラスの男の子のお父さんからの電話。
お母さんが亡くなったと。

夏休み前、家庭訪問した時、お母さんが
「ちょっと、入院することになりまして。」とおっしゃっていた。
気になりながら、夏休みを迎え、
2学期になった。

音楽会の頃、「お母さんが退院したよ。」とうれしそうな彼がいた。
よかった、よかったと一緒に喜んでいたのに。

いろんなことが一度に押し寄せて、
しばらく何も言葉が出ないまま、受話器を握っていた。

電話を切ってから、とるものもとりあえず、彼の家に車を走らせる。
きれいに飾られた仏壇の前にお母さんの優しい笑顔の写真。
「今、友達と遊びに行っていて・・。」
お父さんが申し訳なさそうにおっしゃった。

結局、彼には会わないまま、その日は帰った。

次の日はお通夜。
葬儀場で、お父さんに会う。
そばに、彼が小さい弟と立っていた。
こみあげてくるものを押さえて、「やあ。」と手をあげる。

お父さんが、私のそばに来てこう言った。

「先生、あの子、泣かないんです。
弟はいっぱい泣いたのに、あの子は泣かないのです。
それが心配で・・・・。」

じっとこちらを見ている彼のほうに目をやる。
たった6年生きてきただけなのに、
こんな辛い経験をしなきゃならないなんて。

神様、あんまりだ。

「わかりました。」
お父さんにそう言った。

彼のそばに行って、しゃがむ。
彼の目をじっとのぞき込んだ。

「あのね、よねごんは大人になってからだったけど、
お父さんが病気で死んだの。
よねごんは、泣き虫だったからいっぱい泣いたよ。
泣いて泣いて、いっぱいいっぱい。
そしたら、お父さんがどこかで、大丈夫だよって言ってくれたの。
泣くだけ泣いたら、もう大丈夫だよって。

きっと、あなたのお母さんもそうだと思うよ。
がまんしないで、泣いていいんだよ。
泣きたいときは泣いていいんだよ。」

彼の目にみるみる涙があふれた。
隣に立っていたお父さんの体に顔をうずめて、
声を出して泣き始めた。

がんばれ、いっぱい泣いて、がんばれ。
彼の小さな手を握りしめて、よねごんも一緒に泣いた。


遠い昔の、悲しい思い出。
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by yonegon_gon | 2006-03-30 22:53 | 魔法学校