魔法学校たんぽぽ教室で、魔女よねごんは暮らしています。可愛い1年生との日々をみなさんにおわけします。


by yonegon_gon

プールサイドにて

梅雨の中休みだそうだが、
いいかげんにしてくれと言いたいくらい暑い日が続く。

梅雨の間は、少しでも晴れたらプールに入れるという方針の2年生の先生たち。
おかげで、晴れた日はほぼ毎日、子どもたちはプールに入っている。
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今日も、プールサイドでよねごんは、
海水浴場でかき氷を売ってるおばさんみたいなかっこうで、
椅子に座ってぼーっと、子どもたちが水しぶきをあげているプールを眺めていた。

よねごんの隣の椅子には、とびひで入れないきいくんが、
同じく、ぼーっと座ってプールを眺めていた。

「きいくん、まだプールはだめですか。」
「うん、今日病院へ行ってみないとわかんないの。」
「どれどれ。」
きいくんの可愛い顔を眺めると、ほぼ治っている感じ。
「もう大丈夫そうですね。きっと、今日病院でOKが出ますよ。」
「母さんもそう言ってた。」

そこへ、寒そうにしながらたからくんとゆうくんがプールから上がってきた。
「唇が紫色ですね。」
二人のがちがち震える顔を眺めて、バスタオルを着せてあげた。
そこへ、あっくんもやってきた。

あっくんは、一年生の頃から、水泳がものすごく苦手。
はるなちゃんとみずきちゃんもそうだったが、
一年たって、はるなちゃんは来週からスイミングに通うとはりきっているし、
みずきちゃんは、怖い気持ちを克服し、がんばって泳いでいた。

しかし、あっくんは気持ちはがんばりたいんだけど、
どうしても体がついていかないようだった。

「あっくん、来週からよねごんと楽しく泳ぐ練習やってみますか?」
あっくんは、もごもごしていた。
「みなさん、知ってますか、人間はお母さんのお腹にいる間、
水に浮かんでいたのです。」
「知ってるよ、へその緒で酸素をもらっていたんでしょ。」
「へぇ、物知りだなぁ。ゆうくんは。」

あっくんは、笑うでもなく泣くでもなく、複雑な表情で座っていた。
「まあ、あれです。みんな、最初は水に入るってこわかった。
こわくて当たり前です。
あんなにいっぱいの水の中へ、えらもひれもない人間が入るのですから。」
よねごんの気持ちを察したきいくんが言った。

「ぼくも、初めてプールに入った時は、すごくこわかった。」

続いてゆうくんも言ってくれた。

「うん、ぼくだって最初はスイミングで、入るのいやだって泣いてたんだよ。」
「そういえば、ゆうくんは一年生の頃、
暇さえあれば泣いていましたが、
今はぜんぜん泣かなくなりましたな。たいしたもんだ。」
ほめられたのかけなされたのかわからない顔で、ゆうくんは笑った。

たからくんも、言ってくれた。
「ぼくもだよ。でも、泳げるようになったら、嘘みたい。」
たからくんは、スイミングで4級の腕前なのだ。

あっくんの顔が少しほころんだかのように見えた。
ところが、そこへあがってきたこうちゃんとたっちゃんが言った。
「ぼくなんか、最初からぜんぜんこわくなかった。」
「ぼくも!」

意地悪よねごんは、言ってやった。
「あら、たっちゃん、トイレの花子さんが怖いくせに。」
てへへと照れ笑いのたっちゃんに、ゆうくんが言った。

「女子便の三番目のトイレに花子さんがいるんだって。」
「あー、あのトイレはちょうつがいが壊れてるんですよ。
教頭先生が、治してくれるはずです。
しかし、女子便で花子さんなら、
男子便には太郎さんがいるんでしょうかね。」

わけのわからんよねごんの発言にゆうくんが続いた。

「そうだよ、太郎さん。男子便には太郎さんがいる。」
「嘘!」たっちゃんが、思わず口をはさんだ。

「でもま、大丈夫です。こないだ、花子さんと太郎さんには、
お願いして、たんぽぽの戸棚に入ってもらいました。
たっちゃん、もう安心してトイレに行けますわよ。」

たっちゃんは、半分信じたような、信じないような顔で、
再び、プールに戻って行った。


学校には、花子さんも太郎さんも次郎さんもいる。
辛い思い、悲しい思い、くやしい思いをした
子どもたちの亡霊が、放課後の校舎をさまよっている。

そんなこと言ったら、みんな怖がってしまうから、
賢明なよねごんは言わないけれど。

よねごんは、誰もいない教室で、時々そんな子たちと話しをする。

きらきら輝く水しぶきを眺めながら、
ふとそんなことを考えた暑い日でした。

あっくん、泳げるようになる日が来るといいね。
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by yonegon_gon | 2006-06-29 21:39 | 魔法学校